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【『ファウスト』訳はどれがいいのか?】
諸訳比較すると、
高橋義孝訳がOK。
次善に森鴎外訳がOKとか。
だが、ゲーテの『ファウスト』は、
お若くして没入してしまうと、
命は長くはない、というジンクスがある。
悪魔メフィストの誘惑を真に受けるようだと、
地獄の一丁目に入りやすい。
最終的に、ファウスト博士の救済はあるのか。
あるとすれば、どのように結末を変えるか。
そういう問題意識がないと、
悪魔メフィストの論法に吸引されやすくなる。
ちなみに、訳は、
とりあえず、鴎外訳がkindle版で無料だったので、
これを手掛かりに。
往昔は、
第一部を柴田翔訳で、
第二部はだれかの訳で、
スキャンしていったことがある。
—————————
http://blog.livedoor.jp/nodoka6/archives/52042564.html
ゲーテ 『ファウスト』 翻訳 読み比べ
大学のレポート作成のため、
ゲーテの『ファウスト第一部』の翻訳を読み比べしました。
過去に『ファウスト』を読もうとしたとき、
どの邦訳を読むかで悩んだ経験がありますので、
備忘録を兼ねて、
導入部を中心にいくつかの邦訳を紹介します。
比較した翻訳作品は以下のとおりです。
・手塚富雄訳(第1部・第2部を通読):中公文庫
・森鴎外訳(第1部のみ通読):ちくま文庫
・池内紀訳(第1部のみ通読):集英社文庫
・相良守峯訳(拾い読み) :岩波文庫
・高橋健二訳(拾い読み):角川文庫
・高橋義孝訳(拾い読み):新潮文庫
注) この他、柴田翔訳(講談社文芸文庫)も存在しますが、
浜松市立図書館が所蔵しておらず、比較できませんでした。
一部のみ、同氏の『「ファウスト第1部」を読む』から紹介します。
「東京ゲーテ記念館」公式HP内にある
「邦訳『ファウスト』の歴史」から、
上記の訳者の初訳刊行年を調べると、以下のとおり。
1913年:森林太郎訳『ファウスト 第一部』冨山房
1950年:相良守峯訳『ファウスト』思索社
1951年:高橋健二訳『ファウスト(第一部・第二部)』河出書房
1962年:高橋義孝訳『ファウスト』新潮社
1964年:手塚富雄訳『ファウスト第一部』中央公論社
1999年:池内紀訳『ファウスト第一部』集英社
・手塚訳は第22回(1970年)読売文学賞「研究・翻訳賞」受賞
・池内訳は第54回(2000年)毎日出版文化賞「企画部門」受賞
・高橋義孝さんは
第6回(1955年)読売文学賞「文芸評論賞」を『森鴎外』で受賞
・高橋健二さんは
第9回(1957年) 読売文学賞「研究・翻訳賞」を「ヘッセ」研究と作品訳業で受賞
・手塚富雄さんは
第6回(1969年)日本翻訳文化賞を『ヘルダーリン全集・全5巻』で受賞
・相良守峯さんは
第19回(1982年)日本翻訳文化賞を『ハルトマン作品集』で受賞
・池内紀さんは
第39回(2002年)日本翻訳文化賞を『カフカ小説全集・全6巻』で受賞
池内訳は基本的に散文訳ですので、そのまま表記しました。
誤字脱字等があるかもしれませんがご容赦ください。
*「天井の序言」で 神が悪魔メフィストフェレスに対して
Es irrt der Mensch so lang er strebt. (原文317行)
人は務めている間は、迷うに極まったものだからな。 (鴎外)
人間は、努力する限り、迷うものだ。 (相良)
人間というものは、努めているあいだは迷うものだ。 (高橋健二)
人間は精を出している限りは迷うものなのだ。 (高橋義孝)
人間は努力するかぎり迷うものだ。 (手塚)
思いがあれば迷うもの、それが人間だ。 (池内)
求め続けている限り人間は踏み迷うものだ。 (柴田翔)注
*「天井の序言」で 神が悪魔メフィに対して
Ein guter Mensch, in seinem dunkeln Drange,
Ist sich des rechten Weges wohl bewust.
(原文328-329行)
「善い人間は、よしや暗黒な内の促しに動されていても、
始終正しい道を忘れてはいないものだ」と云うぞよ。
(鴎外)
善い人間は、よしんば暗い衝動に動かされても、
正しい道を忘れてはいないものだ。
(相良)
よい人間は暗黒な衝動に駆られても、
正しい道を決して忘れはしないものだ、と。
(高橋健二)
善い人間は、暗い衝動に駆られても、
正道を忘れるということはないものだ、と。
(高橋義孝)
「よい人間は、盲目な内部の促しにうごかされているときも、
正しい道を忘れてはいぬものだ」と。
(手塚)
良い人間は暗い衝動に駆られても、正しき道をそれなりに行くものだと、ぼやきにこないかな。
(池内)
*「天井の序言」で 神が悪魔メフィに対して
Des Menschen Thatigkeit kann allzu leicht erschlaffen,
Er liebt sich bald die unbedingte Ruh;
Drum geb’ ich gern ihm den Gesellen zu,
Der reizt und wirkt, und mus, als Teufel, schaffen.
(原文340-343行)
一体人間のしている事は兎角たゆみ勝ちになる。
少し間が好いと絶待的に休むのが好きだ。
そこで己は刺戟したり、ひねったりする奴を、
あいつ等に附けて置いて、悪魔として為事をさせるのだ。
(鴎外)
人間の活動はとかく弛みがちなもので、
得てして無制限の休息を欲する。
だからわしは彼らに仲間をつけてやって、
彼らを刺戟したり促したり、悪魔としての仕事をさせるのだ。
(相良)
人間の活動はとかくゆるみがちだ。
人間はすぐ絶対的な休息をしたがる。
そこで、わしは人間に仲まをつけて、
刺激したり、働きかけたりして、悪魔として仕事をさせるのだ。
(高橋健二)
人間の営為は中道にして熄みやすく、
とかく無為を欲したがるものだ。
それだからこそああいういたずら者を人間に添わせて、
人間を突っついたり働かせたり、悪魔としての仕事をやらせておくのだ。
(高橋義孝)
人間の活動はすぐたゆみがちになる、
すぐ絶対的な安息を求めたがる。
だからわしは、刺激したり引き込んだりする仲間を人間につけておく、
それを悪魔としてはたらかせておくのだ。
(手塚)
人間は何をするにせよ、すぐに飽きて休みたがる。だからこそ仲間をつけてやろう。あれこれ手出しをして引きまわす悪魔が相棒だ。
(池内)
*「夜」にてファウストの独白
Das ich erkenne, was die Welt
Im Innersten zusammenhalt,
Schau’ alle Wirkenskraft und Samen,
Und thu’ nicht mehr in Worten kramen.
(原文382-385行)
一体この世界を奥の奥で統べているのは何か。
それが知りたい。そこで働いている一切の力、一切の種子は何か。
それが見たい。それを知って、それを見たら、
無用の舌を弄せないでも済もうと思ったのだ。
(鴎外)
世界をその最も奥深いところで統べているものを
これぞと認識することもでき、
一切の作用をひき起す力と種子を観照し、
もはや言葉の詮索をすることもいらなくなると思ったのだ。
(相良)
この世界を奥の奥で総括しているものが、
なんであるかを知ることができ、
いっさいの作用の力と種子を見ることもでき、
もう、ことばなんかせんさくしなくてもよくなるだろう、と思って。
(高橋健二)
世界を奥の奥で統べているもの、
それが知りたい、また世界のうちに働く
力と元素のすべてを見究したい、
そうなったら、もうことばを漁ることも要るまいと思ったからなのだ。
(高橋義孝)
いったいこの世界を奥の奥で統べているものは何か、
それが知りたい、そこで働いているあらゆる力、あらゆる種子、
それが観たい。そうすれば
もうがらくた言葉を掻きまわす必要もなくなるだろうと思ったのだ。
(手塚)
この世をもっとも奥の奥で動かしているものは何か、それが知りたい。すべて生あるものを動かしている力は何か、そのもとは何か、そいつをこの目で見さえすれば、あれこれいいつのるまでもないのだ。
(池内)
*「閭門の前」にてファウストが学生に語る
Zwey Seelen wohnen, ach! in meiner Brust,
Die eine will sich von der andern trennen;
Die eine halt, in derber Liebeslust,
Sich an die Welt, mit klammernden Organen;
Die andre hebt gewaltsam sich vom Dust,
Zu den Gefilden hoher Ahnen.
(原文1112-1117行)
ああ。己の胸には二つの霊が住んでいる。
その一つが外の一つから離れようとしている。
一つは荒々しい愛惜の情を以て、章魚[たこ]の足めいた
搦み附く道具で、下界に搦み附いている。
今一つは無理に塵を離れて、
高い霊どもの世界に登ろうとしている。
(鴎外)
二つの魂が、ああ、わしの胸に宿っている。
その一つが他の一つから離れようとする。
一つははげしい愛欲をもって
からみつく道具で、現世にしがみついている。
も一つは、むりやりちりをのがれて
高い霊どもの世界にのぼろうとしている。
(高橋健二)
己の胸には二つの衝動が棲んでいて、
互いに離ればなれになろうとしている。
その一つは、激しい欲情で、この現世に
しっかりとしがみついているのだが、
もう一方のは、ぜがひでも塵界を離れて、
偉大な先人の在す境界へ登って行こうとする。
(高橋義孝)
おれの胸には、ああ、二つの魂が住んでいて、
それが互に離れたがっている。
一方のやつは逞しい愛慾に燃え、
絡みつく官能をもって現世に執着する。
他のものは無理にも塵の世を離れて、
崇高な先人の霊界へ昇ってゆく。
(相良)
ああ、おれの胸には二つのたましいが住んでいる。
その二つが折り合うことなく、たがいに相手から離れようとしている。
一方のたましいは荒々しい情念の支配に身をまかして、
現世にしがみついて離れない。
もう一つのたましいは、無理にも埃っぽい下界から飛び立って、
至高の先人たちの住む精神の世界へ昇っていこうとする。
(手塚)
私のなかには二つの魂がある。一つがもう一つと手をたずさえて、ついぞ離れようとはしないのだ。一つは欲望をむき出しにして、この世にしがみついている。もう一つは高く地上から飛翔して、天界のものたちに憧れる。
(池内)
*「書斎」にてファウストとメフィが賭け(契約)をする
Kannst du mich schmeichelnd je belugen,
Das ich mir selbst gefallen mag,
Kannst du mich mit Genus betrugen;
Das sey fur mich der letzte Tag!
Die Wette biet’ ich!
Top! (注:メフィの台詞)
Und Schlag auf Schlag!
Werd’ ich zum Augenblicke sagen:
Verweile doch! du bist so schon!
Dann magst du mich in Fesseln schlagen,
Dann will ich gern zu Grunde gehn!
(原文1694-1702行)
己を甘い詞ことばで騙して
己に自惚うぬぼれの心を起させ、
己を快楽で賺すかすことが君に出来たら、
それが己の最終の日だ。
賭をしよう。
宜しい。
容赦はならぬ。
己がある「刹那」に「まあ、待て、
お前は実に美しいから」と云ったら、
君は己を縛り上げてくれても好い。
(鴎外)
もしまた君が甘い言葉でだまして、
私をぬくぬくと収まりかえらせたり、或いは、
享楽に耽らせてたぶらかすことができたら―
それは私の百年目だ。
賭をしよう。
合点だ。
では約束したぞ。
私がある瞬間に対して、留まれ、
お前はいかにも美しい、といったら
もう君は私を縛りあげてもよい、
もう私はよろこんで滅びよう。
(相良)
甘いことばでいつかわしをたぶらかし、
いい気にならせたら、
わしを享楽で欺くことができたら、
それはわしの最後の日だ!
賭けをしよう!
心得た!
手を打とう!
わしが瞬間に向かって、
とどまれ、おまえは実に美しい! と言ったら、
きみはわしを縛りあげてよい。
その時わしは喜んで滅びよう!
(高橋健二)
君にしてもしこの己に取入って
己がもうこれで満足というように持って行けたら、
己を快楽で誑し騙しおおせたなら―
その時は己の負けだ。
どうだ掛けるか。
賭けましょう。
間違いあるまいな。
己がある刹那に向かって、「とまれ
お前はあまりにも美しい」といったら、
己はお前に存分に料理されていい。
己は喜んで滅んで行く。
(高橋義孝)
きみがうまい言葉でおれをおだてて
おれをおれ自身に満足させたり、
快楽でおれをたぶらかしおおせたら、
それがおれの最後の日だ。
賭けをしよう。
よろしい。
こうした上は二言がないぞ。
おれがある瞬間に向かって、
「とまれ。おまえは実に美しいから」と言ったら、
きみはおれを鎖で縛りあげるがいい、
おれはよろこんで滅びよう。
(手塚)
お世辞で騙して、お楽しみで引きまわしてくれたら、すっぱりケリがついたことになる。
よし、賭けた!
結構ですな!
かための握手だ! そうだ、こうしよう。もしとっさにいったとする、時よ、とどまれ、おまえはじつに美しい―もし、そんな言葉がこの口から洩れたら、すぐさま鎖につなぐがいい。よろこんで滅びてゆこう。
(池内)
*「書斎」にてファウストがメフィに叶えて欲しい願いを言う
Du horest ja, von Freud’ ist nicht die Rede.
Dem Taumel weih’ ich mich, dem schmerzlichsten Genus,
Verliebtem Has, erquickendem Verdrus.
Mein Busen, der vom Wissensdrang geheilt ist,
Soll keinen Schmerzen kunftig sich verschliesen,
Und was der ganzen Menschheit zugetheilt ist,
Will ich in meinem innern Selbst geniesen,
Mit meinem Geist das Hochst’ und Tiefste greifen,
Ihr Wohl und Weh auf meinen Busen haufen,
Und so mein eigen Selbst zu ihrem Selbst erweitern,
Und, wie sie selbst, am End’ auch ich zerscheitern.
(原文1765-1775行)
いや。先っきも云うとおり己は快楽は貪らない。
最も悲しい受用に、受用のよろめきに身を委ねよう。
恋に迷う心の憎、爽快に伴う胸悪さに委ねよう。
物の識りたい欲を擲[なげう]ったこの胸は、
これから甘んじてどんな苦痛をも迎えて、
人間全体の受くるべきはずのものを
この内の我で受けて味わって見よう。
この己の霊で人間の最上のもの深甚のものを捉えて、
歓喜をも苦痛をもこの胸の中に積んで、
この自我を即人生になるまで拡大して、
遂にはその人生と云うものと同じく、滅びて見よう。
(鴎外)
君にいったじゃないか、快楽などは念頭にないんだと。
私は目もくらむほどの体験に身をゆだねたいのだ、
悩みに満ちた享楽や、恋に盲いた憎悪や、気も晴れるほどの腹立などに。
知識欲の圧迫から逃れたこの胸は、
今後どのような苦痛をも辞しはせぬ。
全人類に課せられたものを、
私は自分の内にある自我でもって味わおう、
自分の精神でもって最高最深のものお敢えてつかみ、
人類の幸福をも悲哀をもこの胸に積みかさね、
こうして自分の自我をば人類の自我にまで拡大し、
結局は人類そのものと同じく私も破滅しようと思うのだ。
(相良)
いや、さっきも言ったとおり、わしは喜びなんか問題にしない。
目もくらむ思いをわしは辞さない。極度に苦しい享楽でも、
恋ゆえの憎しみでも、気の晴れる腹だたしさでも。
息苦しい知識欲をいやされたわしの胸は
これからどんな苦痛をも迎えて、
人間全体の受けるべきものを、
この内なる我で受け味わおう。
この精神で最高のものと最深のものを捕え、
人類の幸福も悲哀もこの胸に積みあげて、
この自我を人類の自我にひろげ、
人類そのもののように、ついにはわしも滅びよう。
(高橋健二)
いや、さっきも言った通り、快楽などが問題ではないのだ。
めくるめくような想いがしてみたいのだ。死なんばかりの快楽、
恋から出た憎しみ、胸のすくような立腹などの。
知識欲とは縁を切った己の胸は、
今後どんな苦痛をも避けぬつもりだ。
己は自分の心で、全人類に課されたものを
じっくりと味わってみたい。
自分の精神で、最高最深のものを攫んでみたい。
人類の幸福と苦悩とを己の胸で受けとめてみたい。
そして己の心を人類の心にまで拡大し、
最後には人類同様、己も滅んで行こうと思うのだ。
(高橋義孝)
いや、断っておくが、俺には快楽が問題ではない。
おれは陶酔に身を委ねたいのだ。
悩みに充ちた享楽もいい、恋に盲いた増悪もいい、吐き気のくるほどの歓楽もいい。
きっぱりと知識欲を投げすててしまったこの胸は、
これからどんな苦痛もこばみはせぬ。
そして全人類が受けるべきものを、
おれは内なる自我によって味わいつくしたい。
おれの精神で、人類の達した最高最深のものをつかみ、
人間の幸福と嘆きのすべてをこの胸に受けとめ、
こうしておれの自我を人類の自我にまで拡大し、
そして人類そのものと運命を共にして、ついにはおれも砕けよう。
(手塚)
わかっているな、よろこびなんてことは口にしなかった。めまいを覚えたり、せつなさのきわみの快楽、愛の果ての憎しみや爽快な腹立ちを知りたいのだ。この胸は知識欲とおさらばしたから、これからはどんな苦痛でも甘んじて受け入れる。人間に与えられているものを、まさにこの身で味わいたい。心を張りつめて、もっとも高いものと、もっとも底辺にあるものをつかみとりたい。この胸に快楽と苦悩をかさねてみたい。この自分を人類そのものにまで押しひろげ、とどのつまりは破壊してもかまわない。
(池内)
いかがでしょう?
原文は「プロジェクト・グーテンベルク」
鴎外訳は「青空文庫」で読めます。
「よい翻訳」「よい邦訳」であるかどうかは、
「日本語として日本文学として通用し鑑賞にたえるもの」かどうか、
「芸術作品としての質を保有」しているかどうか、
ということのようで、邦訳を読めば分かるものだそうです。
でも、ドイツ語が読めないながらも、
コンマやピリオド、脚韻など視覚的に分かる部分が
邦訳ではどのように表現されているかを比較したり、
原文のドイツ語を英語に変換して品詞や語順を大まかにつかみ
語彙や語順に対して忠実であるか否か等を比較してみると、
翻訳者の苦労や工夫が偲ばれ、なかなか面白いものです。
それと、鴎外訳について。
冒頭の「薦むる詞」が文語体(古典文法に基づく文章)のために
難解な印象を受けますが、基本は口語体なので意外に読みやすいです。
ですから、冒頭で挫折しそうになったら、本を閉じるのではなく、
「薦むる詞」を飛ばして次の「劇場にての前戯」に進み、
「劇場にての前戯」も難解ならば、
さっさと「天上の序言」に進みましょう。
「天上の序言」にさえ辿り着いたら、
あとは『ファウスト』の世界に入っていくと思います。
「薦むる詞」と「劇場にての前戯」は、
それほど重要ではないので(本格的に勉強するには大事ですが)、
そんなところでつまずいて、鴎外訳を読むチャンスを失うのは
もったいないと思います。
ところで、私のセレクト基準は
浜松市立図書館が所蔵する「文庫本」だったのですが、
偶然にも訳者全員が戦前生まれで、
現東大医学部卒の鴎外(19歳で卒業!)を除き、
旧制東京帝国大学文学部ドイツ文学科卒業または
新制東京大学大学院修士課程卒業でした。
恐るべし、東京帝国大学文学部!!
(旧制帝国大学≒新制大学院)
竹内洋さんは著書『教養主義の没落 変わりゆく学生文化』で、
「帝国大学文学部」は「教養主義の再生産装置」であり、
卒業生が旧制高校の教師になることで教養主義を伝達していた
と述べています。
次々に生み出される『ファウスト』の新訳が
東京帝国大学文学部出身者という現実を目の当たりにすると、
「教養主義の再生産装置」としてのDNAのようなものが、
知らず知らずのうちに受け継がれているのかなぁ、なんて思ってしまいます。
もっとも、竹内さんによると「教養主義」とは、
「歴史、哲学、文学など人文学の読書を中心にした
人格の完成を目指す態度」であり、
旧制高校が本堂、帝国大学文学部が奥の院とのこと。
手塚さんにしろ池内さんにしろ、
名のみ高くて読まれることの少ない『ファウスト』を、
できるだけ多くの人に読んでもらいたい、と述べているにすぎず、
読んで人格完成に役立てよ、といった「教養主義」に対しては
むしろアンチなのかもしれません・・・。
森鴎外全集 <11> ファウスト (ちくま文庫)
森鴎外訳 『ファウスト』(森鴎外全集)ちくま文庫
ファウスト〈第一部〉 (岩波文庫)
相良守峯訳『ファウスト〈第一部〉』岩波文庫
ファウスト〈1〉 (新潮文庫)
高橋義孝訳『ファウスト〈1〉』新潮文庫
ファウスト 悲劇第一部 (中公文庫)
手塚富雄訳『ファウスト 悲劇第一部』中公文庫
ファウスト 第一部 新訳決定版 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
池内紀訳『ファウスト 第一部』集英社文庫
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この記事へのコメント
1. Posted by しんのすけ 2018年03月23日 21:09
5 初めまして。
しんのすけ と申します。
私、今まさにファウストの訳者で悩んでいる所です。
手元には高橋義孝氏のものがあり、非常に相性良く読んでいるのですが、他の訳者ではどのような表現になっているのか気になっていました。
沢山の訳で何度も読み通す気力はないので、次のチョイスは森鴎外かなぁと思いました。
とても参考になりました。
ありがとうございました。
2. Posted by シェイクスピアわかりにくい 2018年12月22日 05:12
5 大山定一訳はいかがですか?
どのような評価をされますか?
—————————-
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14105061259
私は高橋義孝訳の新潮文庫で読みましたが、特に難しくはなかったですよ。何度も読み返してる人が多いっていうのは、別に難解だから何度も読まなきゃいけないってわけじゃないでしょう。面白かったもしくは感動したから読み返すんであって−−−それに、読み返すたびに新しい発見があるというのは、名著だからであって「難著」だからではない。
ゲーテの『ファウスト』は、シェイクスピア作品に似ていて−−−単に戯曲だという点だけでなく、全編が韻文、つまり詩で書かれているんですよ。それもあって、どれが難しいとか難しくないとかいうよりは、訳者によって文体というかスタイルがかなり違ってくるんです。シェイクスピア同様、好みの問題が大きくなるわけですね。
ストーリー(物語)そのものの複雑さ(単純さ)も、まあシェイクスピアと同程度。第二部はかなりごちゃごちゃした印象を受けるかも知れませんが、名前と性格を頭に入れて読まなきゃならない登場人物の人数はシェイクスピアの戯曲より少ない。ギリシャ神話の知識は少しあった方がいいかな。
名高い手塚訳、あとは岩波、新潮、集英社、どれでもいいでしょう。持ち歩いて空いた時間に少しづつ読むのにも適してるから、文庫本の方が便利ですかね。デカい本だと確かになかなか片付きにくいかも。fukuouhyakuwaさんが書かれているように、先に「あらすじ」を頭に入れてから読むのも手でしょうが、その目的ならWikipediaの「あらすじ」でも用は足りるから余計なカネをつかうことはない。そのへんもシェイクスピアと似てますかね。
森鴎外訳は、実は現在では青空文庫で読めるようになっています。XHTML版はココ。底本になってるのはちくま文庫の森鴎外全集です。
http://www.aozora.gr.jp/cards/001025/files/50909_49238.html
プロジェクト・グーテンベルクの原文はココ。第一部と第二部です。
http://gutenberg.spiegel.de/buch/3664/1
http://gutenberg.spiegel.de/buch/3645/1
—————————–
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奇遇の連続・・・ | キラーコイルは①生体②感情③想念④意識⑤無意識の …
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2009年2月6日 … ファウスト体験、 ミウラカズヨシ事件、 サカキバラセイト事件、 オウムサリン事件、 など の検討をへて、 宮台真司の社会学の検討に至り、 ほぼ、三次元世界的思考回路の 点検は終了した感があります。 ここ最近は、 荒俣宏の「神秘学マニア」と …
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https://plaza.rakuten.co.jp/juksmile/diary/201105100001/
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2011年5月10日 … … たものですが、 水木先生は、これをみて、世界には、どんなことをしてでも幸せに なりたい人がいるものだなぁ、と思われたそうです。 このセリグマンの魔法歴史書と、 ゲーテの『ファウスト』の二冊をもとに、 水木しげる先生は、『悪魔くん』を発…
宝石講座初級上下巻レジメ再掲載 | キラーコイルは①生体②感情③想念 …
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2012年1月28日 … ゲーテのファウストの教訓 デスノートにおける死神の眼の獲得代償 覚悟の有無 覚悟が ないと翻弄されやすい 神智学、薔薇十字の修行 霊視、透視能力獲得の代償 シュタイナーの宇宙論の癖 空中に浮かぶ想念形体が見える透視家たち
【重要ヒント291】仁田丸久『呪術とその背景』目次 | キラーコイルは①生体 …
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2019年6月5日 … 466 ファウストの伝説 467 風姿花伝 468 風流志道軒 469 フェニックス 470 福来友吉 471 不射之射 472 藤原明子(中扉) 第9 473 富士見酒 474 二人の我 475 仏像 476 プトレマイオ五世 477 船戸の神の戸───霊術の祖 478 船酔いと …
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