【村上春樹、河合隼雄に会いにいく】

笠井潔によると、
村上文学は、一種の転向文学ではないか、
とのことである。
70年代に、どっちに向かうのかで、
いろんな人が、いろんな方向に分かれた。
内田樹などは、
構造主義と合気道と、
二本立ての道を選択した。
60年代と70年代初頭の政治の季節の洗礼を
受けた者たちが、どんな方向に向かったのか。
いま、団塊の世代と呼ばれている人たちである。
いまは、はるかに若返った世代、
つまり、46歳前後のビジネスマンでも、
織田信長と豊臣秀吉と徳川家康を足して、
三で割ったような経営者になりたいとか、
それは、それは、グループ207社で年商200億円の
経営者がテレビで紹介される。
こういうのは、辻さん、つまり、ジューが行く、
という感じで、金銭亡者として揶揄される。
なぜかしら、戦国時代をビジネスマンはイメージする。
かつての金銭亡者ホリエモンは、
いま、宇宙ビジネスのほうに
かなりの関心をシフトしている。
こちらの宇宙ビジネスは本気だろうと推定される。
さて、
何かの問題を抱え、
それを解決していくために、
小説家は、手工業的な職人技に励む。
ユング派の河合隼雄は、
療法の一つとして、
箱庭療法を提唱する。
これは、小さな箱庭劇である。
相似形モデルを構築することにより、
歪んだ心的構造を調整しようとするものであろう。
ユングの場合は、
やはり、対キリスト教的であり、
神-悪魔を上下軸とし、
イエス-聖霊を左右軸とし、
四位一体構造を提起する。
とどのつまりは、悪的なるものの処理の仕方が
問題のようであり、単に、悪的なるものを排除しただけでは、
反発バネが逆に大きくなることに、ユングは気付いたのである。
じゃー、どうするのかというと、
邪悪なるものは、鎮める他ない、ということ。
とはいえ、こちらの仮説では、
善霊と悪霊との相克葛藤により、
人間は進化していく、としている。
スウェーデンボルクあたりは、
善霊二体、悪霊二体が人間に内在しており、
その相克葛藤により、人間が進化していくと
みなしている。
邪悪なるものと、どう向き合うのか。
それが、1995年以降の村上春樹の問題意識でもある。
おそらく、人は、邪悪なるものにおいてこそ、
普遍的に繋がるのだ、と。

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