【日本人のための宗教原論】

論理で納得しても、
感情で納得しない。
この論説の典型が、
小室直樹の『日本人のための宗教原論』である。
アカデミズムの外にいる人は、
概ね、小室直樹に喝采を送る人が多い。
しかし、多々、おかしい点は、
田中角栄の評価問題、
平和主義の考え方、
の二点である。
そして、不思議にも、
論理的に整理するのであるが、
読後においては、感情において納得しないのである。
小室直樹から抽出できることは、
日本の経済成長の隠しだまは、
リニアモーターカー建設だという一点であろう。
それ以外は、
何か丸め込まれるのだが、
彼の割り切り方と、日本の現実の乖離が、
目立つだけとなる。
つまり、
個々の特殊の人間にとって、
具体的な実践の処方など、
彼はしないので、
残るのは、一般論としては正解みたいだが、
特殊論として、何かごっぽり抜け落ちた感じとなる。
まぁ、アカデミズムの人は、
こうした民間の小室直樹の言説は、
間違っても取り上げることはない。
それは、マルクス主義認識言語論を展開したとされる
三浦つとむを絶対にアカデミズムが取り上げないのと
同じである。
まぁ、何かの沽券にかかわるのであろう。
また、そうした民間サイドの言説に振り回されるようで、
対抗論理を構築しがたいことも事実である。
いずれにしろ、
小室直樹の理論知は、
普通の人の実践知にはならないこと。
サラリーマン諸氏が、司馬遼太郎を読んで、
捻じれた不満を代理表明している感じと同じであろう。
わたしは、
あの司馬遼太郎の本を日本人がどうして読むのか、
まるで理解できない。
つるつるの感じで、読後、何も残らない「空」という
感じが、こちらはするだけである。
明治の人は偉かった、今の人はだめだ、
これが、司馬遼太郎の結論である。
だめだ、と言われている今の人が読んで、
感動しているらしいのが、何か倒錯的というか、・・・
何というか。摩訶不思議である。
だが、
日本人のための宗教原論は、
オウム事件を意識して書かれたもので、
基本は、国際化時代とは、相手の宗教心情の構造を
理解することを要求されるということ。
そして、原始キリスト教は、
明確に、カルト宗教だったことの指摘である。
サリン程度で、びっくりしてはならない。
ジェノサイドは、古代ユダヤ教の十八番であったこと。
つまり、異教徒は、人間外の扱いされたということ。
新教と旧教の争闘に見られるごとく、
宗教は殺人宗教たりえる怖さを抱えているのだということ。
そういうことを小室直樹を宗教音痴の日本人に宣旨する。
一般論としては、正論であっても、それで納得する人はいない。

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