【国家意識と政治的関心が 人一倍強かった尾吹善人(元憲法学者)】
ドイツ法学のケルゼンとシュミットの翻訳者。
かなり筋金入りの憲法学者であるみているのは、
東北大出身の尾吹善人氏です。
これを知ったのは、
山口・副島『法律学の正体』の紹介にて。
評論は全く拝見していないところ、
憲法学を「天皇」条項から始めるのは、
この人以外に、あまりいないのではないか、と。
もっとも、
他の憲法本をあまり拝見していませんけど。
たいてい、人権条項から始める類が多い。
こういうところから始めるのは、
実は、底が浅いのではないかと、
こちらは薄々感じているところ、
さらには、こちらは、
憲法改正無限界論者なので、
歴史的産物としての憲法の内容は、
いかようにでもなると解しています。
帝国憲法から新憲法への移行を
「8月革命」であるというのは、
いかにも、苦しい言い訳と解します。
じゃー、誰が革命の主体であり、革命の対象は何だったのか、と。
はっきりと、
マッカーサー主導の占領憲法といえばよろしいのに。
「革命」という語は、いかにも無責任な用語ではないかと
こちらは解しています、ね。
あと、最近拝見したものとして、
元ローマ法担当の木庭顕氏の基礎入門三部作があります。
以下、木庭氏について。
http://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/49f3699c2a0418d62e3c685cb52ada39
河野 (前略)それで、木庭先生のもとへ、
日本近代で勉強したいといいに行ったら、
いきなり叱られるわけですよ。
日本人だから日本近代という発想がダメで、
まずはデカルトを原書で全部読んでからまたきなさい。と。
與那覇 恐ろしい。まだそんな世界があるんですね。
帝国大学が生きているというか。
河野 大学院に進むということが、
法学部ではふつうではないのですよ。
つまり院を受けるなら、いったん、先生に相談に行く
というカルチャーがある。
まあ、だいたい「やめておけ」といわれるわけですが。
與那覇 身元引受人が要るわけですね。
入口で徹底的に絞るかわりに、
一度入れたら最後まで手とり足とり面倒をみる
「古きよき日本的経営」が残っている、
最後の聖域ともいえそうです。
駒場の大学院はそのあたりが「新自由主義的」ですから、まったく違う。
河野 駒場はとりあえず入れて、淘汰される文化ですね。
大澤 前提的には放置。
ほとんど個人芸で成り立っている世界とでもいいましょうか。
学生にせよ教員にせよ。
その放置加減が自分にあいそうだと思える学生だけが
進学すればよいのだけれど、現状そうでないから。難しいですね。
で、どうなのか、というのは、まったく不明ですけど。
本人は、自称、老いぼれ、落ちこぼれの二ボレ教授、とか。
「2コボレオチ教授」のほうが通りがいいでしょう、ね。
で、どんな先生なのかを垣間見るには、以下をご参照。
http://blog.livedoor.jp/liberalarts21/archives/27064970.html
授業の雰囲気については、以下をご参照。
http://seesaawiki.jp/w/gp009/d/%CB%A1%A4%CE%A5%D1%A1%BC%A5%B9%A5%DA%A5%AF%A5%C6%A5%A3%A5%D6%A1%CA%CC%DA%C4%ED%A1%CB
担当教官:木庭 顕 教授
2004年度 夏学期 必修(但し、同名の科目内で選択制)
1. 04年度の内容は、著名な民事法の判例を素材として、ローマ法以来の法律学の議論を媒介としながら、現代の我々が用いている法概念を捉えなおそう、というもの。
2. 素材として取上げられた判例は、占有・代理・委任といった民法の主要分野における、しかも基本書で通例触れられるような著名なものばかり。具体的に扱う判例は授業の初回で示される。その数じたいは少ない(平均して1回あたり2~3件程度)が、その代わりに判決の原文を読み込んでくることが要求され、判例百選や解説を読んで済ませることは無理。
3. 授業のおおまかな構成は、1)判例を素材としたソクラティック・メソッド、2)判例じたいに関する先生のコメント、3)当該分野におけるローマ法の知見に関するレクチャー、の3つに分類できる。このうち1)が授業時間の7割ほどを占め、対して2)や3)は「駆け足」になることがある。
4. このうち1)では、典型的なソクラティック・メソッドが(LS内でも類例を見ないほど?)徹底して行われる。そこではテクニカルな知識や解釈論が問われることは少なく、むしろほとんどの場合には素材となる事件の「事案」について詳細に問われる(2.のような予習が求められるのは、このため)。教授による介入はほぼ皆無で、問答の積み重ねから「事案」の本質を明らかにすることになる。「正答」が出せないからといって叱責されるようなことはなく、根気強く答え続けることが第一になる。
5. よくある「懸案事項」として、ローマ法に関する前提知識はどれほど必要なのか、という問題がある(2.で述べたところでは3)の部分にこれが登場する)。毎回のようにラテン語のテクニカル・タームが登場するのは事実だが、その意味・内容については当然ながら教授の解説が加えられる。また(筆者の実感ではあるが)その全てを正確に理解することは本質的ではないので、特に繰り返される重要事項(「占有」、等)について理解ができれば、授業との関係では支障はない。
6. 評価については、04年度は口頭試験が行われた。具体的には、木庭教授を筆頭とする3人の試験官と学生1人が、授業の内容をベースとして約20分にわたり問答を繰り返す、というもの(但し、日程調整等の都合で受講人数が多い場合には実施不可能であり、現に05年度は受講者が多かったため通常の筆記試験が実施された)。他方、「平常点」は一切ない。そのため、授業中の問答で失敗してもそれが成績評価に響くものではない。但し、余りに欠席が多い場合には相応の対応がなされるのは、言うまでもない。
7. 授業の参考文献は、初回および各回ごとに教授から提示されるが、それを読まなければ授業内容が理解できない、というものではない。また、教授自身のローマ法に関する論文を読み漁る必要もない。但し、法学教室にかつて連載されていた「カタバシス」は参考になる。
8. やや乱暴に言えば、この授業はちょっとした「異世界」を楽しむものと言ってよい。この授業で学習する内容は、多くの場合、即座に・直接的な解釈論上の結論を示してくれるわけではないが、法的思考に関する起源や歴史を参照しつつ現在の法状況を捉えなおすという訓練は、二十年越し・三十年越しで効いて来るともいえる。何より、20世紀末の日本で起こった一流商社どうしの紛争を、共和政ローマの思考枠組によって分析する、という夢か冗談のような行程を、この授業では毎回のように参加しながら体験することができる。その意味では非常に珍しい授業である。
ダ=ヴィーン∀!!
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